握力とクライミング能力は関係があるのか?

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こんにちは、nyamoです!

クライミングを長年やっているとよくきかれる質問があります。

握力ってクライミングに関係ありますか?

今回はこの質問に答えます!

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握力とクライミング能力は関係があるのか?

結論から言うと握力とクライミング能力は関係があります。

その根拠はROCK&SNOW45号に掲載された「研究=クライマーズボディ」という神回の記事にあります。

(2009年10月発売)

出版社: 山と渓谷社 発売日: 2009/10/05

この記事では総勢193人のクライマーから、握力、保持力、保持持久力、前腕周径囲などを計測し、最高グレードとの相関関係を調べています。

この記事で行った測定結果から握力と最高グレードには正の相関関係があることが分かっています。

握力と最高グレードの相関関係

まずは2つのグラフを見てくだい。

出典:ROCK&SNOW 045
出典:ROCK&SNOW 045

上の2つのグラフはどちらも体重1kgあたりの握力と最高グレードの相関関係を表しています。

グラフ1はリードグラフ2はボルダリングを主体としているクライマーの測定結果です。

まずはこのグラフの相関係数の数値を見て下さい。

グラフの画像に赤線でアンダーラインが引いてある部分です。

相関係数の数値はx(横軸)とy(縦軸)の関係の強さを表しています。

0.7〜1.0 強い正の相関

0.4〜0.7 正の相関

0.2〜0.4 弱い正の相関

0〜0.2 ほとんど相関がない

グラフ1(リード主体)の相関係数=0.506

グラフ2(ボルダリング主体)の相関係数=0.622

相関係数を見るとグラフ1,2はどちらも正の相関があることがわかります。

正の相関とは、xが大きければyも大きくなる関係です。

つまり、最高グレードが高い人の方が、体重1kgあたりの握力が高い傾向があることが分かります。

ここからはROCK&SNOW45号の文章を引用します。

どちらのグラフでも、高いグレードを登れる人のほうが体重当たりの握力は高いことがわかります。

ただし、同じグレードの人でも、筋力値には大きな幅があります。

中略

例えば、グレードが5.12aのリードクライマーの握力をみると、最も低い人では0.39㎏/㎏、最も高い人では0.92㎏/㎏と、2倍以上もの差があります。

これは、クライミングが筋力・筋持久力だけでなく、技術も重要であるためです。

一般的に、グラフ内の直線(回帰直線)より上に来ている人は、筋力があるわりには登れていない人、下に来ている人は筋力が小さいわりに登れている人(技術の上手な人など)と見ることができます。

あるいは、上に来ている人は筋力に依存して登っている人、下に来ている人は技術に依存して登っている人といえるかもしれません。

出典:ROCK&SNOW 045

グラフから見て、握力とクライミング能力に関係があることは間違いないでしょう。

しかし上記の引用にも記載されていますが、クライミングは技術や柔軟性など筋力以外の要素も重要になってきます。

自身の現状を把握し、どこに重点を置いてトレーニングを行うべきか?

それを常に考えてトレーニングを行うことが大切と言えるでしょう。

相関関係があるのは、体重あたりの握力

今回紹介した測定で最高グレードとの相関関係があると分かったのは、体重1kgあたりの握力です。

単なる握力の数値ではありません。

つまり握力がいくらあっても、体重が重ければ体重あたりの握力は低くなります。

握力が50kgあっても体重が80kgなら体重1kgあたりの握力は0.625です。

グラフから見ると0.6という数値では段を登ることは、おそらく難しいでしょう。

筆者の実体験からも握力はあって損はないと思います。

僕の握力は65㎏で、体重は夏以外の時期は57㎏ぐらいです。(夏は60~62㎏ぐらい)

体重1㎏当たりの握力は1.14となります。(夏場62㎏だと1.04なので大分かわりますね)

今回紹介したグラフから見るとかなり高いほうです。

最高グレードは4段です。

1.14はどれぐらいの保持ができるか具体例をあげます。

・ビーストメーカー・マイクロス10mmで片腕懸垂ができる

・ビーストメーカ―・マイクロス6mmで懸垂やフロントレバーができる

・デジクライミング・ナノクリンプス4mmにぶら下がれる

・岩場で4段、5段のホールドを見ても可能性を感じることが多い (登れるかは別の話だが無理だとは思わない)

保持にはそれなりに自信がありますが、技術的には未熟な部分がたくさんあると感じています。

体の可動域も狭いので良いポジショニングがとれないことが多いです。

そのため、ストレッチも頑張っています。

僕の場合は筋力より技術を磨いた方が上達の余地があるといえますね。

前腕は太い方が良いのか?

”筋力は筋の断面積に比例する”というトレーニングの基礎知識があります。

それに準じれば前腕は当然太い方が良いでしょう。

握力も当然、前腕が太い方が高い数字が出せるはずです。

そして、こちらのグラフを見て下さい。

出典:ROCK&SNOW 045

このグラフもROCK&SNOW45号の測定によるものです。

これは前腕の周径囲と保持力の相関関係です。

保持力の計測方法は、ロックリングス(メトリウス)を用いた装置に片手でぶら下がり計測しています。

出典:ROCK&SNOW 045

自身の体重以上保持できるクライマーは重りを装着し、何キロまでぶら下がれたかを計測します。(3秒保持できたら有効)

上のグラフを見ると前腕の周径囲が大きい人ほど保持力が高いことが分かります。

しかも相関係数は0.698とかなり高めです。

このことからも前腕は太い方がクライミングにおいて優位に働くことが分かります。

この項で紹介した保持力の数値も最高グレードと強い相関関係がありますが、本記事では握力をテーマにしているので、そちらは今後別の記事を書こうと思います。

握力はクライミングにあまり関係ないという反論に対して

「握力が弱くてもクライミング強い人知ってますよ~」という意見ももちろんあると思います。

実際に僕の知り合いにもいます。

僕の知人の例を1つ紹介します。

僕の知人は岩場の最高グレードがルートで14c、ボルダーは三段です。

握力は46㎏で、体重は57㎏。

握力46㎏は成人男性の平均値より少し低いぐらいです。

この条件で体重1㎏当たりの握力を計算すると0.807となります。

先ほどのグラフ1(リード主体)、グラフ2(ボルダリング主体)をみると、この数値は回帰直線の少し下に位置します。

つまり、体重あたりの握力が低いのに難しい課題が登れているということになります。

しかし、この知人はクライミングは強いですが難易度が高い真っ向勝負の保持課題は苦手としています。

単純に悪いホールドにぶら下がるのもあまり得意ではありません。

考察すると、この知人は保持に関する筋力は低いですが、技術や他の能力が高いので、難しいグレードが登れていると考えられます。

課題にもタイプがあるので、グレードが高くても技術で保持をごまかせる課題もたくさんあります。

技術や他の能力が高ければ握力が低くても強い人がいるのは自然なことでしょう。

ただ、今紹介した例からも握力をベースとした筋力はあって損はないと思います。

ボルダリングの高難度課題は間違いなく強い保持が必要です。

実際にグラフ1(リード主体)とグラフ2(ボルダリング主体)では、相関係数がグラフ2のほうが高く、筋力や瞬発力がより重要なボルダリングの方が握力と最高グレードの相関性が高いことが分かります。

握力はクライミングに関係あるのか?まとめ

握力はクライミングに関係あります!

根拠はROCK&SNOW45号の記事(193人のクライマーを対象に行った測定)で、体重1㎏当たりの握力と最高グレードに正の相関関係があることが分かっているからです。

正の相関があるので関係がある!

結論としてはシンプルです。

なので僕個人の意見としてはクライミング能力の向上のために握力を鍛えるのもありだと思います。

本記事内でも述べましたが、僕自身かなりの前腕筋力クライマーです。

今まで保持に自信をもって、それを武器に登ってきました。

しかしクライミング能力は総合力なので、握力や保持力だけでなく技術や柔軟性なども必要なのは間違いないです。

自分には何が足りないのかを考えてトレーニングをする必要があるでしょう。

体重あたりの握力が低いのに平均値より難しいグレードを登れている方は、握力を鍛えることでもっと難しい課題が登れるかもしれません。

その反対に、体重あたりの握力が高いのに最高グレードが低い方は、技術練習をしたほうが伸びしろがあるかもしれませんね。

そして筋力は筋の断面積に比例するので前腕は太い方がクライミングには有利と言えます。

握力も保持力も前腕が太い方が高い数値が出るはずです。

この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

【この記事で紹介した書籍】

出版社: 山と渓谷社 発売日: 2009/10/05

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