限界グレードを上げるには?心理的限界を外す練習法【クライミング上達法】

トレーニング

自分の能力に限界を感じている。なかなか上達できない。どうすれば上手くなれるんだろう?

nyamo
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こんな疑問にお答えします。

本記事の内容

1 自分の心が限界を作ってしまう

2 心理的限界を作らない練習法

3 グレードのピラミッド

本記事の信頼性

この記事を書いている僕は、クライミング歴10年ほど。ボルダーの最高グレードは4段です。天候が安定したシーズン(冬季3ヶ月間)に合計41段登ったことがあります。

以下がその内訳です。

4段3段2段初段
2本1本9本12本
1シーズン(冬季3ヵ月間)の成果

正直、僕もコンスタントに課題が登れるようになるまでかなり時間がかかりました。

自分の限界グレードを上げ、上達していくためには、心理的限界を作らないような取り組み方が大切だと考えています。

もちろんクライミングを開始して10年たった今でも沢山の伸びしろを感じています。

本記事では、人が限界を感じるとき受けている心理的な影響について解説しています。

そして、どうすれば心理的に限界を感じることなく上達できるのかについて、僕の考えをまとめました。

この記事を読み終えると、あなたも限界の壁を超えるヒントが得られるかもしれません。

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自分の心が限界をつくってしまう

「ここが自分の限界だ」

「自分にはここまでしかできない」

生きていれば誰しも限界を感じることがあると思います。

しかし、その限界は果たして本当に自分の限界なのでしょうか?

面白い例を紹介します。

陸上界には昔「1マイル4分の壁」というものがありました。

出典:(心のブレーキを外す。/為末大) (限界の正体/為末大)

1マイル(約1609m)を4分未満で走ることは人間には不可能であると言われ、医師は「無謀な挑戦は命を落とす」とアスリートに警告し、エベレスト登頂や南極点到達よりも難攻不落と言われていました。

しかし、1950年代、オックスフォード大学医学部のロジャー・バニスターという選手がトレーニングに科学的手法を持ち込んで、1マイルを3分59秒4で走り、4分の壁を突破します。

この話が興味深いのはここからです。

バニスターが4分を切ってから1年のうちに、23人の選手が4分の壁を破ってしまいました。

バニスターという成功者を見たことで、選手達の思い込みが解除され、限界が取り払われたのです。

この事実から分かることは、1マイル4分の壁は人間の肉体的な限界ではなく、ただのメンタルブロックだったということです。

体育会の部活に所属していた方は「もうダメだ〜」と思っても指導者に「もっと出し切れ!」と言われると案外できてしまった、という経験があるのではないでしょうか?

試合でも、ライバルを前にアドレナリンがでて、普段出ないような好記録が生まれることが多々あります。

人間の限界は自分で感じるよりも案外もっと先にあるものなのです。

クライミング界ではよく見る光景

クライミング界では、「1マイル4分の壁」と似た現象が日常的におこります。

誰かと課題をセッションしているとき、みんなができなかったムーブを誰か1人が解決すると、続々とみんなできるようになったり、

再登者がでていなかった課題を誰かが登ると、続々と再登者が現れたりします。

特に自分と実力が近い人間が限界を突破すると「自分にもできる」という心理が働くので、メンタルブロックが外れやすいです。

日本陸上界でも100m10秒の壁を桐生祥秀選手が破った後、サニブラウン選手、小池選手がそれほど期間をあけずに、10秒を切って100mをかけ抜けました。

同じ日本人が10秒の壁を突破したことで他の日本人選手にも影響が出たという考察ができます。

心理的限界を作らない練習法

では、ここからは心理的限界にどのように対処していくのかについて述べていきます。

もし心理的限界を作ってしまうから上達できないのなら、心理的限界を作らないようにすれば良いといえます。

心理的限界を作らない為の1番の解決策は、目の前の問題と向き合い、1つ1つ解決・改善していくことです。

達成が難しい大きな目標をかかげて頑張ると、「自分にはやっぱり無理だ」と感じ、限界の壁をつくる原因になります。

小さな目標を設定し、日々自分のできないことを1つ1つ改善していくことで、小さな積み重ねが大きくなり上達していくのです。

ここで、世界選手権400mハードル銅メダリスト為末大さんの著書「心のブレーキを外す。」から一部を引用して紹介します。

しかし実際のところ、オリンピック選手の統計データによると、子どもの頃からオリンピック選手を目指してきた人は、全体の40%以下だということが分かっています。

成功を収めたアスリートでさえ、はじめから壮大な夢や目標を持っていたわけではないのです。

もちろんアスリートは、何らかの目標を設定し、それに向けてトレーニングをしています。

世界一になるという壮大なものもあれば、力を出し切るという抽象的なものも、この試合で3位に入るという具体的なものもあります。

ですが、結果を出しているアスリートほど、「遠くにある大きな目標よりも、目の前にある小さな目標を優先している」というのが僕の体感知です。

僕は、多くのオリンピック選手にお会いして、目標設定に関するインタビューをしたことがあります。

すると、この統計データを裏づけるように、ほとんどの選手が、はじめは大きな夢や目標を持っていなかったのです。

では、どうして彼らは成功できたのか。理由はこのことに尽きると思います。

「目の前の問題を解決し、改善を繰り返す」彼らは、やみくもに大きな夢を描くのではなくて、その日の目標を立てて、トレーニングをしていたわけです。

「オリンピックに出たい」「メダルを獲りたい」といった目標は、その過程の中で見つかったものでしょう。

心のブレーキを外す。/為末大

短期間で大きな飛躍を遂げることは稀なことです。

基本的にはどんなアスリートも小さな積上げを繰り返しています。

そして、小さな改善を積み重ねることは、上達を感じ、競技が楽しくなる方法でもあります。

「この前3秒しかぶら下がれなかったホールドに5秒ぶら下がれるようになった」

「股関節の可動域が広がって乗り込みができるようになった」

このように1つ1つ問題が改善できたときには喜びが感じられます。

僕の経験上、日々小さな目標をクリアしていくと、前進が感じられるので限界を感じづらくなります。

そして気づいたときには大きな成長を遂げているのです。

クライミング界のレジェンドクライマーである平山ユージ氏も、先ほど為末さんの著書から紹介したオリンピック選手と同様に、目の前の目標設定が上手だと感じます。

もし興味があればユージさんの伝記「YUJI THE CLIMBER」を読んでみて下さい。

ユージさんがクライミングを始めたところから世界のトップクライマーになるまで、どのように目標を設定してクライミングの練習に取り組んできたかが詳細に綴られています。

グレードのピラミッド

クライミングで限界グレードを上げるためには、前の章で前述したことと同じく、手が届く範囲の積上げが大切だと僕は考えています。

下の図を見て下さい。

これはグレードのピラミッドです。

この図を簡単に説明すると、上のグレードを登るためには下のグレードをより沢山登れる実力がいるということです。

自分の手の届くグレードで完登を重ね、技術やフィジカルを磨いていきます。

もっと詳しく見ていきましょう。

上の図はグレードのピラミッドを細分化したものです。

例え「三段を1本登る」という目標を立てたとします。

三段を1本登るためには初段、二段をたくさん登って、フィジカルや技術を底上げすることが近道です。

岩場で初段を数本しか登ったことのない人が、いきなり「三段を登る」という目標を立てて三段にチャレンジすることは、遠回りだと僕は考えています。

三段に対応できる技術やフィジカルが足りていないのに挑戦しても、年間かけても登れない、もしくは数シーズンかけてやっと1本完登できるのが関の山でしょう。

そして時間をかけても登れない場合は、「自分には三段は登れない」と思ってしまいす。

これが限界の壁なのです。

これは三段にトライするなという意味ではありません。

オーバースペックの課題に固執しない方が良いということです。

もちろん限界を上げていくうえで、オーバースペックの課題へのチャレンジも必要だと思いますが、それ以上に初段、二段の課題を多く完登して、実力を積み上げることが大切です。

全くできない課題に一年中取り付いても上達は見込めません。

岩場での下積みの完登が全くなくても、強いジムクライマーがいきなり高難度を登れるのは実力があるからです。

そのような人は下積みのクライミングを既にジムで完了しています。 

記事の冒頭で紹介した筆者のワンシーズン(冬季3ヶ月間)の登攀記録を見ても、限界より低いグレードの積み上げを行っていることが分かると思います。

4段3段2段初段
2本1本9本12本
1シーズン(冬季3ヵ月間)の成果

大切なのは自分の実力を見極め、実力や経験を積上げることです。

小さな積上げは実力も蓄積し、上達する感覚も得られます。

限界グレードを上げるには?心理的限界を外す練習法 まとめ

本記事は「人間に限界は無い」と言っているわけではありません。

大概の場合、限界は自分が思っているよりも先にあり、限界は自分で作ってしまうというのが本記事の論旨です。

そして、限界の壁を作らない為には、目の前の問題と向き合い、1つ1つ解決・改善していく。

実力に見合わない大き過ぎる目標は挫折をまねきます。

目の前の小さな目標をクリアすることは限界の壁を作りづらくし、積み重ねが溜まったときには、いつの間には大きな力になっています。

この記事が皆さんのお役にたてば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

【本記事で紹介した書籍】

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